"" ポイント(3)社会的インクルージョン〜子供の質問に答える〜
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子どもたちから「障がい」について質問されたときにどう対応するかについての基本ラインはすでに書いたので、ここでは具体的な事例を幾つか紹介しようと思う。

 

ジェイコブといつも一緒に遊ぶ子どもたちでさ ジェイコブが何歳か。と言う質問をしょっちゅうしてきます。
「こないだ、クラスでやったジェイコブの誕生会の時、ジェイコブは何歳になったんだっけ?」と、逆に問い返すと、一人の子どもが
「4さい!」
と答えます。そしてさらに子どもたちは、
「それなのに、まだお話ししないの?」
と聞いてきます。
「そうだね。ジェイコブは ことば は使わないね。だけど、ジェイコブはお話しするよね。ジェイコブはどうやってお話しするんだっけ?」
と私が再び問いかけると、
「目で話すんだ!!えっとね、ジェイコブは、やりたいことがあると目でそれを教えるんだよ!」


   ・・・・中略・・・・

子どもたちはさらに、ジェイコブがいつ 口で お話しするようになるのか聞いてきます。
そこで私は、もちろんいつの日か、ジェイコブも口でお話をするようになる可能性があることを話します。と同時に、もしかしたらジェイコブは口でお話をするようにならないかもしれない、ということも話します。


「もしかしたら、ジェイコブはコンピューターを使うように(なって、コンピューターでお話をするように)なるかもしれないよ。それとも、私たちの方が、もっと手話を使えるようになってジェイコブとお話ができるようになる。っていう可能性だってあるのよ。」

私は、できるだけ、わたしたちはみいんな、これからずっと一緒に関係を築き上げていくんだということ、そして、他のお友達のことも時間をかけてわかるようになってきたのと同じように、ジェイコブこのことも、時間をかけて互いに成長するにつれて、もっとよくしれるようになることを子どもたちが気づくように彼らを励ましています。


            (Thompson, B., et al. 1993)

フェリックスに関する質問の多くが、彼の とても小さい足 のことに集中してきたので、ある日、私たちはみんなで靴を脱いで足の大きさを比べてみました。
子どもたちの間から、「あんたの足、大きいわね。」とか、「おまえの足、ちっちぇえな。」といった声が聞こえてきました。
そこで私は、「みんな、大体同じ年だけど、足の大きさはいろいろ違うんだねえ。」とコメントをした後、さらに背の高さや髪の毛の色などを比べて、子どもたちの中の「違うところ」探しを始めました。
どうやら子どもたちは、いかに、みんながそれぞれ「違うところ」を持っていて、それでも別のところでは「同じところ」をもってるか、という事実を認識し始めているようでした。


             (Thompson, B., et al. 1993)

 

クリスはとても笑顔がかわいくてキュートだったので、最初クラスの子どもたちはよろこんで彼にお世話を焼きたがりました。そして、何人かの子どもたちは、クリスのことを
「赤ちゃんみたいだ。」
と言いました。
私は、クリスは赤ちゃんではなくて、4歳の男の子だと言うこと、だけど、彼の体の筋肉はみんなの体の筋肉のようには働かないので、もうみんながすでにできるようなことも、これから練習して覚えなきゃいけないんだということを子どもたちに話して聞かせました。さらに私は、もしだれかがみんなのことを「赤ちゃん」と呼んだら、どんな気持ちになるか、そして、クリスはどう感じているだろうか、ということを問いかけました。
ある日、オースティンは休み時間にクリスと床の上で遊んでいました。オースティンはクリスの足と膝をぶらぶらとゆすっていましたが、二人ともそれを楽しんでいるようでした。
そこを通りかかったマラリーは、
「やめなさいよ。オースティン。そんなことしちゃいけないって知ってるでしょ?クリスは私たちとは違うのよ!」
と言いました。オースティンは言いました。
「同じだよ!同じ4さいだもん!」


            (Thompson, B., et al. 1993)



5〜6歳の子どもを対象に、障がいをもった人たちに対するポジティブな態度を促進するプログラムの有効性を調べた研究の中で、Favazza & Odom (1997)は、日常的にスペシャルニーズをもった友達と直接関わること(インクルージョン)に加えて、以下のようなアクティビティが、幼稚園児が障がいを持った人をポジティブに受け入れることに効果があったことを報告しています。

  • 本の読み聞かせの時間を利用して障がいに関連したお話を読んで聞かせること。
  • そのあとに引き続いて、読んだ本の内容や広く障がいということについて子どもたちと話す時間を持つこと。
  • 幼稚園で読んだその本を毎週1冊家に持って帰って、お父さんやお母さんに本を読んでもらうこと(プラス、本の内容や広く障がいということについて家族で話す時間)。


私がこの研究を読んで感じたのは、「自分」や「身近な人」とどこか「違う」ところを持っている人たちに対して、何となく私たちが外国から来た人たちに対して感じがちな、"関わることに対する恐怖感"(感じません?わたしはいまだに少しびびってしまいますねえ・・・。)を打ち破って(あるいは感じることもなく)、それこそ自然に、なんてことなく関われるようになる(あるいは、関わろうとするようになる)ためには、なるべく早い時期から「コミュニケーションの仕方が自分と違う」とか「移動の仕方が少し違う」とか「見た感じが他のお友達とちょっと違う」とか、いわゆる「障がい」をもったお友達と直接ふれあって、体でつきあい方を身につけるというのが一番で、それに加えてこの研究で試みられたように、そのお友達をよりよく理解するための(つまりその子が持つ障がいについての)情報を与えられること(この研究では、"本"という情報源を用いていましたね。)、そしてその情報に対して、わからないことや不思議なことをいつでも聞ける人がいて、そういった周りの大人に助けられながら得たいろいろな情報をまとめあげつつ、「違い」をポジティブに見られるものの見方や考え方を形成する、ゆっくりとした時間(この研究の場合、園や家庭で本を読んだあとのディスカッションの時間がそれにあたると思います)が大切なのではないかなあ、ということです。

 

つまりは、子どもたちをポジティブな思考回路へと導くべき私たち大人自身が、まず障がいということをポジティブにとらえる視点を自らの中に育てる必要がある、ということだと思います。


子どもたちからの障がいに関する率直な質問に対して、何かをごまかそうとすることなく率直に、そしてポジティブに答えるのは、一朝一夕にできることでも、回答例を覚えりゃできることでもないと思います。 まずは自分自身が、本当にポジティブに障がいと呼ばれている状態を捉えられるように、あるいは、少なくともポジティブな視点から見ようとする態度(例えば、「・・・くんは、ことばはまだありません。」ではなくて「・・・くんは、"ことば"はたしかにまだ話せないけど、ジェスチャーと表情でしっかりお話しできます。あれは、広い意味じゃきちんと"ことば"ですね。」とか、「・・・ちゃんは、教室の中で、すぐ、靴を脱いじゃうのよねえ。」ではなく「・・・ちゃんは、どうも靴を履いてるのが気持ちよくないらしい。汗でもかいて靴の中が気持ち悪いのかなあ。少し注意して見てみよう。」とか。)をもつ、それこそがとっても大切なことだと思います。もしかしたら、このことがインクルージョンを成功させるために、いっちばん、大切なことかもしれませんね。

 

文責:笠原真帆

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