"" おわりに:模範的プログラムから学ぶこと
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CIPプロジェクトに長らくかかわってきたことから,私たちは障害をもった幼児のためのインクルージョン・サービス実施に関してと、新たな園がインクルージョンモデルを採用し始めた時にそれを維持する能力に関して、長期的/短期的問題への展望をもつことができるようになった。サービスモデルを実施する方法論は,それが実施される地域の特徴を反映することに加えて、模範的な実践の基準にも合うべきである事を念頭に,模範的なプログラムにみられた特徴をまとめてガイドラインとして発展させてきた(Thompson et.al., 1993)。以下のガイドラインは,普通幼稚園・保育園と園職員が,インクルージョンの信念を「信じる」段階から「実行する」段階に移行することを可能にし,永続的な構造を確立する助けとなることを目的に作成された。


共通の価値基準と将来像の採用


多様なグループの人たちによって確立された1組の価値基準 (*価値基準のページに戻るを持つ事により,様々な機関の互いに異なる機能や手続き,そして各幼稚園・保育園が採用するそれぞれの幼児教育理念などの相違を乗りこえることができた。全ての子どもと家族を対象とするインクルーシブな幼児教育を基盤に据えた共通の価値基準と将来像が、普通幼稚園・保育園においてインクルージョンが何年にもわたって継続する原動力となったのである。

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地域に根ざした幼稚園・保育園の参加


私立の営利あるいは非営利の幼稚園、さらにヘッドスタート・プログラムなどを含む、主に健常児を対象とした数多くの「地域に根ざした幼稚園・保育園」は,障害をもつ子どものインクルージョン実施園として大変優れたものである。地域の園を巻き込む事ことの強力な理由の1つは,障害をもつ子どもの家族が健常児の家族と同じように地域で就園先を選ぶ機会を提供するということである。家族は特定の園を好むかもしれないし,自分たちが居心地がいいと感じる園に子どもを通わせたいと思うかもしれない。

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インクルーシブな園を始めるための多様なアプローチ法


幼児を対象にしたインクルーシブなサービスを地域で始めるためには,数多くのアプローチ法がある。このような方法の中には,1)免許を有する人材を園の職員として契約を交わして雇う 2)混合型アプローチ―最近始まったヘッドスタートと障害児用の幼稚園プログラムを混合させたもの。あるいは、ティーム・ティーチングアプローチに基づいて、早期障害児教育専門教師が巡回教師としていくつかの園においてそこの職員や子供と一緒に仕事をする。地域によっては,以上のようなアプローチを複数組み合わせて使っているところもある。

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機関相互の関係を活かした創造的かつ柔軟な資金供給


障害をもつ子どものための幼児インクルージョン・プログラム実施に関連する必要経費には,子どもの授業料/保育料,加配の教員,施設を使いやすくするための改築,認可に伴う様々な変更,特別な装置/器具や用具類,職員研修プログラム,数多くの家族プログラムなどが含まれる。インクルージョンを実施する事になった園の管理職者は,インクルージョン実施に関わる様々な機関と個人に利用可能な潜在的財的資源について十分理解していなければならない。いくつかの機関が協力してインクルージョンを実施する時(例えば,学校区,ヘッドスタート,地域の幼稚園・保育園),各機関が活用可能な財的資源を利用して、地域独自のニーズに合うような,また家族一人一人のニーズに応じるようなプログラムを支援するための創造的かつ豊かな財政基盤を築く事が可能である。

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保育サービスを提供するプログラム(保育園)との統合


重い障害幼児の保育場所が限られていること,あるいは全く存在しないという問題を解決する1つの方法は,既存の保育園が重い障害をもつ子どもを受け入れることをサポートし、また家族がこのような保育サービスにアクセスできるよう援助することである。この問題の解決のために特に実行できることは,インクルーシブな幼児教育サービスを、終日保育サービスを提供する保育園等において提供することである。

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発達的に適切な実践に基づく質の高い,子供中心のプログラムの提供


Safford (1989)が指摘するように,すべての幼児を対象とする優れた幼児教育実践にはそれ自体に固有の価値がある。またすべての子どもに適切な教授アプローチを用いて、それぞれの子どもに合うように調節したり関わることにより大きな利益が引き出される。能動的学習を支援する子供中心のプログラムの特徴には次の点が含まれる。1)発達的な課題を練習する機会,2)発達的ニーズと子どもたちの特徴を理解している教師,3)具体的経験を通して認知発達を促進するカリキュラム 4)自立を促し,積極的参加を動機づけるように工夫された物理的環境(Day & Drake,1986)。NAEYC, AMS(アメリカ・モンテッソリ協会)あるいは,AMI(国際モンテッソリ協会)による認可は,概して質の高いプログラムである事を示すサインとなる。

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援助つき参加を通してメンバーシップを促す


障害をもつ子どもをクラス内でサポートする補助教員や大人を加配することで,インクルージョンを実施する園/教室において重い障害をもつ子どもが必要とする集中的な支援を提供することが可能となる。私たちの経験からいうと、そういった補助教員たちは他の子どもやプログラム職員との相互交渉が成立するかしないかを決めるという意味で,クラスにその子がどのように受け入れられるかという点において中心的役割を果たすのである。障害をもった子どもと他の子どもたちとの間の相互交渉は以下のような方法で促されるー子どもたちに、障害をもったお友達のコミュニケーション行動に対して応答的かつ敏感に応えることを教える;子どもたちの間に意味のある相互交渉が生じるような機会を提供する;そして、子どもたち同士の相互交渉において必要に応じてサポートする。インクルーシブなクラスの中で障害をもつ子どもと直接関わる大人は,子ども同士の相互交渉を促進させるために子どもたちの行動を注意深く観察し,子どもたちの互いにコミュニケートしようとする試みに対して鋭敏でなければならない。健常児と障害をもつクラスメイトとの間の相互交渉を促進させるために工夫された方法を用いることで,子どもたちが自分たちのコミュニケーションの内容と方向性を自分自身で決定することを可能にし,真のコミュニケーションを励まし,そして友情を育む事のできる環境を整えることにもなる。

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機能的な役割分担に基づいた協力的なチームを作ること


チームが効果的に力を発揮するためには,チームのすべてのメンバー〜障害をもつ子どもの親も含めて〜が子どもの全体の発達に対する共通の哲学と共通の責任を分かち合い,オープンかつ効果的に互いにコミュニケーションできなくてはならない(Rainforth, York & Macdonald, 1992; Swan & Morgan, 1993)。チーム作りの過程と言うのはいつでも複雑なものであるが、インクルーシブ・プログラムのモデルはそれをさらに複雑にする。なぜならば、インクルージョンに関わるメンバーは,しばしばそれぞれが異なった管理体制,任務,哲学をもった多くの地域組織を代表しているからである。さらに重い障害をもつ子どもとその家族がもつ複雑かつ大きなニーズは、子どもと家族自身に対しても大きな努力を求めるものである。

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サービス提供スタッフと家族の両者を対象とした準備活動


申し分のない環境にあっても変化にはストレスが伴うものである。職員と家族のための準備期間およびその間に行われる活動は,一人ひとりが最適な方法でインクルーシブ・サービスへ移行できるようにする上で決定的に重要である(Klein & Sheehan, 1987)。インクルージョンプログラムの参加者は,システムレベルにおける変化ということと、そういった変化の時期において前向きさと創意工夫を持ち合わせる必要性について知っておく必要がある。新しくインクルージョンを実施する園においてしばしば経験された役割の混乱と否定を少なくするには,それぞれが他のメンバーと、インクルージョンの実施により影響を受けるであろう自分たちの役割について話し合ったり,さらにはひとり一人が自分自身の役割の在り方について影響力をもてる機会をもつことである。
また、異なった規則のもと異なった方法を用いて働く様々な園や組織から参加するそれぞれのチームメンバーに対して敬意を払うことは,チームの一員としてインクルージョンに関わる関連サービスの提供者にとって大変必要なことである。ものごとのあり方についての自分の考えをひとまず留保してStephen Coveyのアドヴァイスに従いながら新しいシステムに入るようにしなければならない――「まず人を理解し,次に理解されるようにせよ」,「処方する前に診断せよ」(Covey, 1989)――。インクルージョンプログラムの中でサービスを提供する専門スタッフはこの方法を学び,個人として、チームとして、また、様々な背景と文化をもつ家族と共に働くことを学ばなければならない。そして最後に,協力的かつオープンな関係に基づくチームを作ることを望むならば,研修やチームとしての準備を整えるための活動をばらばらに提供するのではなく、参加メンバー全員を対象に一緒に行わなうことが重要である。

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家族に導かれた意志決定と家族中心のサービス


家族が,わが子のために望ましいサービスを確立し,そのサービスを生涯にわたって維持しようとするときに絶え間なく向き合うフラストレーションは,真に継ぎ目のないサービス・システムの欠如と,家族が知識/技能やコントロール力を持つことや自分自身の立場を主張することに対する専門家からの抵抗である。家族の参加を促すという基本方針は,早期障害児教育専門家たちが良識をもって支持する方針ではあるが(Bricker, 1989; Peterson, 1987; Raver, 1991) ,有意義な自己決定の機会を家族に提供する過程と手続きは,今でも不十分なままである(Bailey & Wolery, 1989; Bricker, 1989; Whitehead, Deiner & Toccafonndi, 1990)。CIPプロジェクトに関わる私たちの経験を通してこの現実が再確認された。専門家の親との関わり方を変えることは、今後も引き続き私たちの最大の課題の1つである。家族が必要な情報/知識/技能を有し自分達が欲しいものを手に入れる力を持てるように、そしてサービスを提供する専門家たちが家族との協力関係を築く事の価値に気付くことができるように、インクルージョンのプログラムを実施しなければならない。

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まとめ


この章を終わるに当たり,私たちが大変気にっているエピソードを1つ紹介しよう。以下のエピソードは、ユーモラスなだけでなく,子どもの言葉の中に重要な考えが非常に明快に表明されている。


5歳のシャノンは,大きな茶色の目をして,いつも微笑を浮かべているかわいい女の子だが,いくつかの障害をもっている。シャノンは小頭症と主に左半身に現れた脳性麻痺とを併せもっている。歩くことはできるが,言葉はない。彼女はまた大発作歴をもっているので,地域の幼稚園は,緊急医療計画をもたねばならなかった。それは適切な場所におかれ,緊急医療の専門家チームの電話番号を含むものであった。最後に、シャノンは胎児期にサイトメガロウイルス(CMV)感染によるコンディションももっていた。医学検査の結果,現在シャノンがウイルスを放出していないことが明かであったが,幼稚園の職員は,用心のため感染の管理に警戒し、妊娠した職員や親がシャノンと接触することを制限した。
重度障害幼児のためのインクルージョン・プログラムに関するビデオの製作段階で、ブロンドの髪と青い目をしたやはり4歳のかわいい女の子,ソフィーがクラスメイトのシャノンについてどう思うかと問われた。制作チームのメンバーの1人がインクルージョン・プログラムについて健常児がどう思っているか知りたくてこう尋ねたのだった―「ねえ,ソフィー,シャノンはレインツリーに行った方がいいと思うかい,それともシャノンみたいな子どもばかりがいる幼稚園に行った方がいいと思うかい?」
ソフィーは、ほんの少しの間思考を巡らしてからこう答えた。「ううん,レインツリーに行った方がいいよ。どうしてかって,その幼稚園でみんなシャノンって名前だったら先生がどの子のことを呼んでるか分んないでしょう(Thompson, et. al., 1993. p.25)。」

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コピーライト©2002, University of Kansas, Circle of Inclusion Project.
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