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インクルージョン実施に伴う大人の側の変化と準備
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プログラムの成功と失敗に影響を与える参加職員の大きな力が認識されなければならない。したがって、関わる大人たちを教育し支援することの必要性はいくら強調してもしすぎることはない。インクルーシブな普通幼稚園・保育園の中で働く障害児教育の専門スタッフたちは,インクルージョン開始当初は自分たちの役割についての懸念を表明したが,たいていは子どもたちのために最善を尽くすのが自分たちの義務であり,この目的のために一定期間の不安や不快感にもよろこんで耐えようとしていた(Stargardter, 1988; Thompson, Wegner,et. al., 1991)。反対に普通幼稚園・保育園の職員スタッフはインクルージョンプログラムに参加する機会を得たことを喜び、またそれと同時に子どものニーズに応える能力が自分にあるかどうか,あるいは自分達がどの程度の支援と援助を受けられるかについての懸念を示した。実際に重い障害をもった子どもが参加し始めるにつれて,直接子どもと関わり、医療的機具の操作も含めた子どもの世話をすることに対する不安が生じた。子どものニーズを満たす事に関して他の専門家や家族との関係が発展するにつれて,園内で働く障害児教育の専門スタッフはインクルーシブな実践について肯定的,支持的になっていった。またクラス担任の教師たちも,子どもと関わる事に対する自信を増し、子どもたちとの相互交渉も増加した。しかしながらこの新しいパラダイムにふさわしい方策の探求は、障害児教育と普通教育の双方が関わって継続して続いていくもののようであった。10年以上にわたり,私たちは,関わる職員や彼らの仕事と関連する次のような数多くの問題に遭遇した。

  • 異なるプログラムの間の競争(障害児用幼稚園とインクルーシブな地域の幼稚園・保育園)
  • 職員の役割変化に伴う混乱 
  • 互いの理解不足により引き起こされる普通幼児教育職員(園長,クラス担任,副担任)と幼児障害児教育職員(管理職,教師,関連サービスのスタッフ,補助職員)との間の不快感や葛藤
  • 重い障害をもつ子どものサポートとしての補助職員の役割の不明確さ(Thompson, et.al., 1993; Thompson & Wegner, 1993)。

これらは,次の節においてより詳しく述べられる。


1つの地域に2つ以上のサービス提供モデルが存在する場合,その異なる園のスタッフ間に競争心が起こるかもしれない。例えばある子どもが半日プログラムを組み合わせた時(半日を障害児用の幼稚園・通園施設に通い、残りの半日を普通幼稚園・保育園に通うというような),どちらでの生活がその子の成長を最も助けているかということをめぐって問題が起こった。もっとも専門家の中には、このような両方の世界(「障害児教育」の世界と「普通教育」の世界)を組み合わせた方法がベストの方法であると述べる人もいる(Stargardter, 1988)。同様の根底に流れる競争意識は,学校区内のある幼児障害児教育プログラムがインクルーシブ・モデルに移行し,同じ学校区の別のプログラムがインクルージョンを実施しなかったようなときにも起こった。


「役割分担の混乱とそれに伴う欲求不満」という要因が、インクルージョンに関わるすべての職員の満足感にマイナスな影響を及ぼしうる最大の要因である。インクルージョン実施に伴い生じる園内での調整ニーズを満たすための方法を考えるということが、職員を特に混乱させることもあった。インクルージョンを実施する普通幼稚園・保育園の数が増加するにつれて,それぞれが大きく異なるスタイルで機能する各園のスタッフと子どもたちにもっともよく合うように、園内でサービスを提供する障害児教育専門スタッフたちは自分の役割を調整しなければならなくなる。そのため職員は柔軟さと創意工夫が求められた。例えば、関連するサービスを提供する専門家の巡回スケジュールの組み立て方は、多くの場合現実には園や子どもたちのニーズに合わなかった。場合によっては,短期間の間に集中的に少ない回数でサービスを提供する方法の方が、効果的なコンサルテーション・学際的チームによるうまく統合されたサービス提供という意味で、より生産的であることが分かった。(例えば,毎週2回から3回園にやってきて20〜30分行うセッションの代わりに,隔週で園を訪問して午前中をずっと子どもと過ごし、クラスの自然な生活の流れに合わせてサービスを提供する作業療法士のように)のためには,より生産的であることが分かった。
チーム体制,協同協力体制(コラボレーション),問題解決技能に関する現職研修は、インクルージョンに関わる職員より高く評価され,また常に求められるものであった。今にして思えば,インクルージョンのように創意工夫と柔軟さを求められるプログラムで働く事に対する職員の反応を予想するために役立つ情報として,人格のタイプや異なる仕事に対するスタイルの理解に関連する内容をもっと含めるべきであったと感じている。またインクルージョン実施に先立って、一人ひとりが自分たちの経験や反応を予期することの助けとするために、もっと徹底したシステム自体の変化の過程に関する基礎的研修もさらに望ましかっただろう。


インクルージョンを新しく実施する際における混乱のもっとも一般的な原因の一つは,それぞれの園と職員の実践に対する理解と尊重が欠けているところにあるように思われる。普通園の中でサービスを提供する障害児教育および関連サービスの専門スタッフは、その園が基づいている幼児教育のモデルと教育方法や日課について知る必要があった。それらの障害児教育専門スタッフは,しばしば幼児教育の知識を持たず,時によっては子どもの発達の知識をも欠く場合があった。障害児だけを対象とした分離のプログラムの場において重い障害をもつ子どもとだけかかわってきた障害児教育専門家は,時に生産的かつ敬意をもった態度でインクルージョンを実施する普通クラスの中で働く事が難しかった。
分離教育の場で仕事をしてきた長い歴史をもつ研究者として,言葉をもたない子どもが多くいるような教室では,大人同士が話をする傾向があることを私たちはよく分かっていた。そういうような教室の中でのよくあるシナリオは,障害児教育の専門家あるいはセラピストが、大人も子どもも皆いるクラスの中で、担任の教師に対して子どもへの働きかけ方を示しつつ臨床的な説明を加えるといったものである。このようなやり方は,普通幼稚園・保育園の職員からは,サービスの対象である障害をもった子どもにとって失礼であり、その子どもを他の子どもたちから否定的に切り離す行為であり,さらには、無礼且つクラス環境に対して破壊的な振る舞いであるとしばしばみられた(コーヒーカップを片手に教室に入り込んできて,個人的な話を始める専門家のことなどは言う必要もないだろう)。私たちになじみのもう一つのシナリオは,子どもと同数(あるいはそれ以上)もの多くの大人が教室の中にいる、重い障害をもつ子どものための就学前プログラムである。インクルージョンの実施に伴って専門スタッフが普通園の中で子どもと関わって専門サービスを提供する場合、園やクラスに「押し入」るような態度・行動をとらないように最大限の注意を払う事が必要である。


もちろん、普通幼稚園の教師や保育園の保育士なども,障害児教育関連サービス提供スタッフと障害児教育専門教師が果たしている役割と貢献について知る必要がある。彼らもまたチームの一員となるよう努力し,重い障害をもつ子どもへの働きかけについての他の専門家の意見や提案に対して自分たちのクラスの門戸を開けるように調整する事を学んでいかなければならない。このような園職員の協力的な態度は,チームの中心的な働き手としての認められ必要な情報や物事の決定権を与えられたと園職員が感じるほど,良い悪いを判断されているのではなくありのままを大切に認められていると感じるほど,また干渉されているのではなく支援されていると感じる程度に応じて、阻害されたり高められたりした。

 

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