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就学前の障害をもつ子どものための幼児インクルージョン・サービスを開始した当初から,私たちは,プロジェクトに関わる参加者全員の経験と意見を記録し始めた。フィールドノートを作成して、起こった出来事や経験したことをありのままに記録し、それと同時にプロジェクトへの参加者あるいはオブザーバーとして考えたことや感じたことなどもノートに記録していった。さらには、定期的に、参加する親や専門家とのインタヴューの録音テープを作り,彼らの考えや思い出を一言ひとこと文字として残せるようにした。また、10年間にも渡って広く集められた録画ビデオには、インクルージョンを実施する教室で実際に生活している子どもたちの生の様子が記録され、人材養成訓練のための教材として活用されるだけでなく,それ自体が大変豊かなデータ源となっている。加えて、私たちはインターナルアプローチやタイムサンプリング法といったデータ収集法を用いて数多くの観察研究及び単一被験者実験研究を行ったが,それらの結果はすべて、実践を通して理解を深めてきたと私たちが信じていることを裏付けるものであり、また更にそこに深い洞察を加えてくれるものであった。
以上のような経験や手続きをとおして、質的アプローチと量的アプローチを組み合わせた研究方法は、システムレベルでの改良変革を考えていく時に非常に大切な新しいプログラムモデルの発展と評価の理解ということを促す上で大変貴重な情報を提供してくれる有効な手段である、ということが確信された。すでに述べたように私たちの多面的なアプローチは,観察とデータ収集と考察と,インクルーシブで家族中心のサービスを創造し,維持するための10年にわたる実践,に基づいている。このようなアプローチに固有のものは,データを解釈する視点とデータの分析単位の分け方を、研究の過程に応じて調整することを可能にする柔軟さである。質的なアプローチは,複雑なシステムを全体的に見ることを可能にし,インクルーシブプログラムを構成する多様な要素とその影響について考える手段を提供した。さらに量的アプローチをこのような質的プロセスと結合することで,ある主観的な印象を量的に証明したりあるいは退けたり,またはその他の見過ごされていた重要な要素を発見したりする機会を得ることができた。3つの研究の中で私たちは主として,プログラムの質的側面に焦点をあてた(Perez,1992; Stargardter,1988; Thompson, Wickham & Wegner,1991)。その他の6つの研究では,インクルージョンを実施する教室での直接観察と、観察されたデータを"環境","大人","子ども"という変数に基づいてコード化するという作業が行われた。更にその他いくつかの研究では、訓練過程,設備,大人の接し方,プログラム,子ども,職員相互の特徴の設定といった様々な変数についての比較が行われた(Brooke,1992; Kimura,1991; Lit,1993; Stegemann,1993; Wegner,1991; Wickham,1993)。
以下のセクションでは、個々の研究・その他様々な示唆的経験・プログラムの結果等の有益な情報を整理するために、プロセスを通して生じてきた重要な意味を含む思われる9つのテーマについて概観することにする(Thompson&Wegner,1993)。9つのテーマは以下のとおりである。
テーマ1)プログラムの成功に影響を及ぼす要因
テーマ2)子ども/クラスメート/大人、それぞれの参加
テーマ3)子ども同士の友情の発展に対する大人の影響
テーマ4)子どもが参加しやすい環境を整える
テーマ5)障害をもつ子どもの親の経験と展望
テーマ6)健常児の親の経験と展望
テーマ7)インクルージョン実施に伴う大人の側の変化と準備
テーマ8)インクルージョンを成功させるための補助教員の活用
テーマ9)子どものパートナーとして機能するために大人が準備すべきこと。
尚、事実に基づいた結果や印象を提供する一方、これらの結果を解釈したり重要な示唆を強調するにあたっては、ある程度の研究者側の自由度や機知が活かされた。
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